クレディ・スイス 米ヘッジファンド取り引き 多額損失の可能性
スイスの金融大手、クレディ・スイスはアメリカのヘッジファンドとの取り引きをめぐって多額の損失を計上する可能性があることを明らかにしました。
日本の野村ホールディングスが多額の損失が出る可能性があると発表したのと同じ取り引きとみられ、影響の拡大が懸念されています。
クレディ・スイスは29日、アメリカに拠点を置くヘッジファンドとの取り引きをめぐって、損失を計上する可能性があると発表しました。
ヘッジファンドとの取り引きの過程で追加の証拠金の差し入れを求めたものの、ファンド側が応じられず、債務不履行が起きたためだととしています。
具体的な額は確定できないものの、多額の損失となり、業績に大きな影響を及ぼす可能性があるとしていて、これを受けて、スイスの株式市場でクレディ・スイスの株価は大幅に値下がりしました。
クレディ・スイスは、ほかの複数の金融機関も、この取り引きに関わっているとしています。
日本の野村ホールディングスが29日、多額の損失が出る可能性があると発表したものと同じ取り引きだとみられているほか、市場では影響が欧米のほかの金融機関に拡大することが懸念されています。
クレディ・スイス株が一時11%安、ヘッジファンド関連の損失で
スイスの銀行、 クレディ・スイス・グループの株価が欧州時間29日朝の取引で一時11%安と、昨年3月以来の急落となった。同行は米国のヘッジファンド顧客が証拠金を巡りデフォルト(債務不履行)となり、「高額の損失」可能性に直面していると明らかにしている。
発表によると、同行は顧客のデフォルト後、ポジション解消を進めている。「ポジション解消による損失の規模を特定するには時期尚早だが、非常に高額となり、1-3月(第1四半期)業績に重大な影響を与える可能性がある」と電子メールで説明した。
野村ホールディングスも米顧客に関連した大きな損失の可能性について警告している。事情に詳しい関係者によると、損失はビル・フアン氏のアルケゴス・キャピタル・マネジメントの取引解消に関連している。
フォントベルのアナリスト、アンドレアス・べンディッティ氏はリポートで、金融ベンチャー企業、グリーンシル・キャピタル関連の問題も解決にほど遠いのに、クレディ・スイスは「またも業績に重大な影響を与え得る別の問題」に直面したと指摘した。
原題:Credit Suisse Slumps on ‘Highly Significant’ Hedge Fund Loss(抜粋)
野村とCSが多額損失の可能性、アーケゴスがデフォルトと関係筋
[東京/チューリヒ 29日 ロイター] - クレディ・スイスと野村ホールディングスが多額の損失に直面する可能性を警告した。関係筋によると米ヘッジファンドのアーケゴス・キャピタル・マネジメントが、マージンコールに対してデフォルトを起こした。
スイスの金融大手クレディ・スイスは29日、米国を拠点にするヘッジファンドがマージンコールに応じなかったことを受けて、このファンドのポジション解消を進めており、第1・四半期の業績に影響が及ぶ可能性があると明らかにした。写真はチューリッヒにある同社ビル。今年3月24日に撮影。(ロイター/Arnd Wiegmann)
クレディ・スイス(CS)は29日、米拠点のヘッジファンドがマージンコールに応じなかったことを受けて、このファンドのポジション解消を進めており、第1・四半期の業績に影響が及ぶ可能性があると明らかにした。
野村ホールディングスも、米国子会社と取引先との間で多額の損害が発生する可能性を公表した。損害見込み額は精査中。この取引先に対する請求額は、3月26日時点の市場価格に基づく試算で約20億ドルあるという。
ブルームバーグによると、野村HDの米子会社で多額の損失が生じる可能性があるとの発表は、ビル・フアン氏のファミリーオフィス、アーケゴス・キャピタル・マネジメントによる取引巻き戻しに関連しているという。アーケゴスは野村HDのプライムブローカレッジ業務の顧客だったとも報じている。
野村HDの広報担当者は「コメントは差し控える」とした。
26日の米株式市場では、幾つかの銘柄がブロックトレード(大口投資家が証券会社を通じて株式を一度に大量の相対取引で売買すること)の影響で急激に値下がりした。事情に詳しい関係者の話では、アーケゴスによる保有資産売却が、こうした取引に絡んでいるもようだ。
クレディ・スイスは「ポジション解消による損失の正確な規模を見極めるのは時期尚早だが、第1・四半期の業績に大きな影響を与える可能性がある」と説明した。
クレディ・スイスによると、あるファンドが先週、同行と他の金融機関のマージンコールに応じなかった。そのため、同行も含めて複数の金融機関がポジション解消を進めているという。
関係筋は、クレディ・スイスの損失額が最低でも10億ドルに上り、40億ドルまで膨らむ恐れもあると指摘した。クレディ・スイスは見通しについてコメントを控えている。
野村HDの株価は16.3%下落して終了。クレディ・スイスは13.8%急落した。米国市場ではモルガン・スタンレーが約4%安。ゴールドマン・サックスは1.5%安。S&P総合500種指数は0.6%安。
市場関係者は、同社の資産売却が現時点でシステミックリスクに発展する可能性は低いと指摘。ただ、アーケゴスの保有資産売却がすでに完了したのか、これからさらに売りが出るのかを巡って、警戒感が浮上している。
米株式市場でブロックトレードが行われた銘柄は、メディア大手バイアコムや同業ディスカバリー、米上場の中国インターネット企業バイドゥ(百度)、テンセント・ミュージックなど。26日の株価はバイアコムとディスカバリーが前日比でともに約27%下落し、バイドゥとテンセント・ミュージックは23日終値と比べて一時33.5%安、48.5%安となっており、投資家やアナリストは下げが加速した理由の1つとしてブロックトレードを挙げた。
<不安定な値動きに警戒感>
一部の市場参加者によると、これらの銘柄の不安定な値動きを受け、投資家の警戒感が強まっている。
OANDAのシニア市場アナリスト、エドワード・モヤ氏は「正気の沙汰ではない。こうした企業の中には過去数カ月で価格が高騰してきた銘柄があると考えれば、われわれが買い過ぎたのかと心配になるだろう」と述べた。
ただファンドの資産処分があったとしても、市場全般への影響は限られるとの声も聞かれる。実際26日はバイアコムなどの急落にかかわらず、ナスダック総合とS&P総合500種は1%を超える上昇を記録している。
ベアードの市場ストラテジスト、マイケル・アントネッリ氏は「ファンドの持ち高解消を巡る話は時折浮上してくる」と説明した上で、26日にブロックトレードされた銘柄の一部は短期的には乱高下するかもしれないとの見方を示した。
複数の投資銀行がブロックトレードに関わっていたとみられる。関係筋によると、ゴールドマンは26日に3回のブロックトレードを実施。バイドゥとテンセント・ミュージック、唯品会(ビショップ・ホールディングス)の株式66億ドルを売却し、その後、バイアコムCBSを17億ドル、ディスカバリー、ファーフェッチ、中国の愛奇芸(iQiyi)、GSXテクエデュの株式23億ドルを売却した。
また、モルガン・スタンレーは2回のブロックトレードを実施し、それぞれ40億ドルの株式を実施。ゴールドマンの損失は大きくないとみられる。
関係筋によるとドイツ銀行もブロックトレードに関わっていた。ドイツ銀は声明で、損失を出すことなくアルケゴスのエクスポージャーに絡むリスクを大幅に低減した述べた。
米証券取引委員会(SEC)は29日、アーケゴスに関する状況を注視しており、市場参加者と先週末から連絡を取っていると明らかにした。
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